JAOMPTの今後の展望
会長 山内正雄
JAOMPT(日本運動器徒手理学療法学会)の前身であるJOMTA(日本整形徒手療法協会)は、Kaltenborn–Evjenth(K-E)コンセプトを軸にコースワーク運営を行ってまいりました。その後、2008年にIFOMPTへの正式な会員として認め、その当時はK-Eコンセプトを中心にしたコースワークの修了者に対しOMPT(当時はOMT)として認定されていました。
しかし、IFOMPTは2008年に新しい教育基準を採択し、それ以降は改定を繰り返しながら「特定の手技に偏った考え方の徒手療法ではなく、エビデンスに基づいた幅広い徒手理学療法」を求めるようになってきました。つまり世界の徒手理学療法はクリニカルリーズニングに基づき、エビデンスの高い評価方法と治療手技の選択や研究法など、大学院の教育レベルを基礎とした考え方に急速に変化してきました。
K-Eコンセプトも時代に合わせて、KEIそしてKEOMTと組織およびカリキュラム及びその内容の変更を行ってきました。しかしながら、KEOMTとなってからはIFOMPTの教育基準とは一線を画しています。例えば、KEOMT ではコースワーク・大学院教育の実施団体により教育カリキュラムが異なり、IFOMPTが提示している現在の教育基準に合致している部分が少なくなってきました。また、その組織の構成メンバーや教育指導者はIFOMPTによってOMPTとして認定されていない理学療法士が多く、現在のKEOMTでは既存のコースワークを終了してもIFOMPTの定めた教育基準に沿った教育を実施したことにはなりません。KEOMTのOMTはIFOMPTの定めるOMPTとは基本的に別物ですので、公的な場でOMPTを使用することはできません。例えば、アメリカのクラウス先生が運営するOakland Universityの大学院(Master ではなくGraduate Certificate)を修了しても、IFOMPTの教育基準を満たしたカリキュラムではないのでOMPTは名乗れません。また、アメリカのカリフォルニアでティム先生が運営するKEOMTのコースワークを修了しても同様です。繰り返しになりますが、現在のKEOMTではOMPTを取得することはできませんし、OMPTとして公の場で活動することができません。
Kaltenborn先生、Evjenth先生のお二人が亡くなったことは大きな打撃です。KEOMTの副会長であるアメリカのクラウス先生は、大学院で徒手理学療法を教えていますのであまりIFOMPTには興味がないようです。さらに、Evjenth先生とコラボした経験から、今後はKEOMTとは異なった独自色を出してくるでしょう。オリジナルな考えを中心に、フックなどの独自色を出してくるでしょう。また、それぞれの国においても、評価・治療の手技だけを教えるコースなど、様々なカリキュラム行われていますので、これらをKEOMTとしてまとめるのは困難だと思われます。
KEOMTは改めて独自の路線を進む可能性がかなり高く、IFOMPTのOMPTは各国間での相互承認や国際スポーツ団体での公的資格として認定が進み、今まで以上にグローバルスタンダードになりつつあります。そのため、KEOMTの先行きはあまり明るくはないかもしれません。何故なら、保険点数においてもOMPTだと優遇される国がありますが、KEOMTのOMTでは全く優遇されないでしょう。さらに、KEOMTの年会費が高額(個人会員で$132)であり、現時点で得られるメリットはあまり多くありません。Webで何科目かの講義を受講すればKEOMT(OMPTではなく)のインストラクター試験を受けられますが、それもあまり大きなメリットとは考えられません。
そこでJAOMPTでは、OMPTの取得を目指すコースと、歴史的な背景よりKEOMTの取得を目指すコースの2つのコースを運用していくことを理事会で決定いたしました。
① KEOMTの基準ではなく、IFOMPTの基準に沿ったOMPTを取得できるコースを開催いたします(当会としてはこのコースをメインに行っていく予定です)。
② 徒手療法の知見を更に深めたいとKEOMTを選択されるOMPTコースを修了された方、もしくは最初からKEOMTだけをめざす方のために、KEOMTコースを開催いたします。
今後、新型コロナウィルス感染の収束状況を見極めながら、コース運営を再開していく予定です。
最後に、OMPTを公な場で使用するためには、IFOMPTが認めた組織や大学院のカリキュラムを修了して修了書を取得しただけでは不十分です。OMPTはIFOMPTが認めた資格の名称ですから、IFOMPTに会費を支払う義務が発生します。それらの修了書を取得した後に毎年IFOMPTに会費を支払うことでOMPTを公的に名乗ることができます。しかし、2008年からしばらくはJAOMPTが、5年ほど前からは日本理学療法士協会が、暫定的に一時拠出していましたのでOMPTと名乗ることができました。しかしながら、次年度からは日本理学療法士協会は支払予定がありませんので、各個人に負担していただくことになります。当然、支払っていただけない場合は、OMPTとして資格の名称を使用することができません。今後はJAOMPTのホームページにてOMPTとして公的に認定されている方の氏名を毎年掲載しようと考えています。
上記のコースに関しては16期から適応となります。JAOMPTのこれから